看護師による病院のSWOT分析具体例
看護師長ともなればSWOT分析を使って病棟の方向性を導き出す必要に迫られることがあります。
念のためSWOT分析をおさらいしておきましょう。
SWOT分析とは、
S:強み(Strength)
W:弱み(Weakness)
O:機会(Opportunity)
T:脅威(Threat)
の4つの切り口で、企業とそれを取り巻く経営環境を整理する戦略的なフレームワークです。
近年では病院でも経営的な視点を取り入れる試みが盛んですので、SWOT分析のように企業で利用されるフレームワークを導入する病院も増えているようです。
実際のSWOT分析の具体例を見てみましょう。
以下は、ある地方都市にある病院の看護部の看護師長がSWOT分析したものです。
看護師長による病院のSWOT分析の具体例
S:強み
50年に及ぶ診療実績
理事長の人的ネットワーク
総合病院としての診療範囲の広さ
地域一番の病床数の多さ
真心のこもった丁寧な接遇
W:弱み
同族経営による緩慢な経営
看護部長のリーダーシップ不足
看護師不足による労務負担の増加
病棟ごとの業務のバラツキ
専門スキルを持つ看護師の不足
ICU病床の稼働率の低さ
O:機会
一人暮らしの高齢者の増加
地域連携によるトータル医療ケアの必要性
近隣への高速道路の整備
T:脅威
国民医療費の増加
人口半減による過疎化の進展
近隣住民の所得の低下
急性患者の近隣病院への流出
強みと弱みは病院や病棟内部に存在するものです。一方、機会と脅威は病院を取り巻く外部環境から抽出します。内部か外部かの判断基準としては、コントロール可能なものであるかどうかで考えると良いでしょう。
たとえば、「看護師のスキル不足」これは強み・弱み・機会・脅威のうち、どれに属するでしょうか?
看護師のスキルを向上させることは、病院内でコントロール可能ですね。従って、弱みとして考えるのが妥当です。
では、「患者数の減少」。これは弱みでしょうか。脅威でしょうか。
基本的に患者数を増やそうと努力することはできるので、コントロール可能なもの、つまり弱みとして考えるのが妥当でしょう。
ただし、近隣に競合となる病院ができたことに起因する患者数の減少であれば、脅威としてカウントしても良いかもしれませんね。
このようにして、一つ一つの事実をピックアップし、4つの象限でくくっていきます。もちろん、SWOT分析は現状を整理して終わりではありません。
そこから病院や病棟の解決の方向性を導き出すことが目的といえます。
SWOT分析から導き出される方向性としては、
強みを最大限に活かして機会をものにする。
弱みを克服して機会を活かす。
強みを活かして脅威を回避する。
弱みと脅威の因果関係を断ち切る。
強みを活かして脅威を機会に転換する。
など、様々な方法が考えられます。
たとえば、「看護師の質の高さ」が強みで「患者の要望の高度化」という機会があるとすれば、看護師の質の高さを活かして高度化する患者の要望に応えることで、他の病院との差別化を図る、といった方向性を導き出すことができます。
また、SWOT分析を病院や病棟だけではなく、看護師長個人や看護師一人ひとりに当てはめる個人SWOT分析も、自分自身のスキルを棚卸しするツールとしても使われています。
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